

演劇をやってみたいけど、稽古って何をするんだろう……
稽古のイメージが湧かなくて、一歩踏み出せない方は多いと思います。
「難しい演技訓練ばかりで、ついていけないかも」
「初心者の私が行っても大丈夫なんだろうか」
そんな不安、よくわかります。私も最初の稽古場に向かうとき、緊張で足がすくみました。
でも実際に稽古に入ってみると、想像とは全然違いました。
この記事では、演劇の稽古で実際に何をするのかを、現場目線で丁寧にお伝えします。

演劇の稽古、全体的な流れは?
演劇の稽古は、公演の数ヶ月前から始まり、本番に向けて段階を踏んで進んでいきます。
大きく分けると、以下のような流れになります。
- 基礎練習期:身体・発声の基礎固め
- 本読み稽古:台本を読み合わせて役を理解する
- 立ち稽古:実際に動きながら演じる
- 抜き稽古:特定シーンを繰り返し磨く
- 通し稽古:最初から最後まで通して演じる
- 本番直前稽古:細部を整えて本番に備える
劇団や作品の規模によって違いはありますが、この流れは多くの演劇現場に共通しています。
稽古の中身を3つの視点で見てみよう
① 基礎練習:身体と声を鍛える
稽古の最初は、ほぼ必ず「基礎練習」から始まります。
身体のウォームアップとして、ストレッチ・体操・ランニングなどを行います。
舞台は映像と違い、カットがありません。長い本番を乗り越えるための体力と柔軟性が必要です。
発声練習では、腹式呼吸を使って声を出す練習をします。
「あえいうえおあお」などの母音練習、早口言葉、「あめんぼの歌」などが定番です。
実際の稽古場では、みんなで声を合わせて発声練習をする光景がよく見られます。
最初は「こんなに声を出すの?」と驚くかもしれませんが、続けるうちに声が通るようになってくるのを実感できます。
② シアターゲーム:演技の基礎を楽しく身につける
シアターゲームとは、ゲーム形式で演技の基礎を学ぶトレーニングです。
初心者でも自然に「表現すること」「相手を見ること」「空間を感じること」が身につきます。
たとえばよく使われるのが「エア大縄跳び」。
道具がない状態で、縄を使っているように見える動きをみんなで合わせます。
「縄があるように見えるか」を観客視点で確認しながら、表現を磨いていきます。
現場では、シアターゲームを通じてメンバーの緊張がほぐれ、
チームとしての一体感が生まれていくのを何度も目にしてきました。
③ 台本稽古:役を生きる
基礎練習が終わると、いよいよ台本を使った稽古に入ります。
本読み稽古では、椅子に座ったまま台本を声に出して読み合わせます。
役の関係性や物語の流れを全員で共有する大切な時間です。
立ち稽古では、実際に舞台空間を使って体を動かしながら演じます。
演出家からの「ここはもっと間を取って」「声のトーンを変えて」といった指示(ダメ出し)を受けながら、少しずつ芝居を深めていきます。
ダメ出しは怒られているわけではなく、演技を良くするための大切なコミュニケーションです。
最初は戸惑うかもしれませんが、現場では「ダメ出しが多い=それだけ期待されている」と感じることが多いです。
初心者が稽古で意識したいこと
稽古に参加し始めた頃、特に大切にしてほしいことが3つあります。
「うまくやろう」より「正直に動く」
初心者のうちは、うまく演じようとするより、その瞬間に感じたことを正直に体で表現することが大切です。作った演技より、素直な反応の方が舞台では生きることが多いです。
「観察する」ことを大切にする
先輩役者の動きや演出家のアドバイスを、ただ聞き流さずにしっかり観察しましょう。
稽古場は、実は学びの宝庫です。
「休まない」ことが信頼につながる
舞台は全員で作るものです。稽古を休むと、ほかのメンバーの稽古に影響します。
現場では「休まない」「時間を守る」というシンプルな姿勢が、信頼の土台になります。
今日からできる3つのアクション
- 毎朝5分、腹式呼吸と発声練習をする
「あえいうえおあお」を1セット声に出すだけでOK。続けることで舞台で通る声が育ちます。 - 近くの演劇ワークショップを調べる
「○○市 演劇 ワークショップ 無料」で検索すると、初心者向けの体験稽古が見つかります。まず一度、稽古場の雰囲気を体感してみてください。 - 好きな舞台を観に行く
稽古のイメージを持つためにも、まず舞台を観ることが大切です。小劇場のチケットは2,000〜3,000円程度から。役者たちが稽古で何を積み重ねてきたかを想像しながら観ると、また違う見え方がします。
まとめ:稽古は「失敗できる安全な場所」
演劇の稽古は、うまくできなくて当たり前の場所です。
失敗しながら、仲間と一緒に作り上げていくプロセスそのものが稽古の醍醐味です。
「うまくできるかどうか」より「やってみたいかどうか」が大切。
その気持ちがあれば、稽古場はきっとあなたを歓迎してくれます。
現場で何年も稽古を重ねてきた私が言えるのは、
「稽古を続けた人だけが、舞台に立つ喜びを知ることができる」ということです。
あなたの挑戦を、心から応援しています。
稽古期間の一般的な流れを知っておこう
個々の稽古内容だけでなく、公演までの全体の流れをイメージできると、初参加でも安心して臨めます。小劇場のよくあるスケジュール感を紹介します。
稽古初日は「顔合わせ・本読み」から始まることが多く、台本を全員で読み合わせて作品の全体像を共有します。序盤は読み合わせと立ち稽古の繰り返しで、場面ごとに動きを付けていきます。中盤になると通し稽古が入り始め、作品を頭から最後まで流して全体のリズムを確認します。
終盤は小屋入り(劇場入り)です。場当たり(照明・音響と動きの確認)、ゲネプロ(本番同様の総稽古)を経て、いよいよ初日を迎えます。この流れを知っておくだけで、「今どの段階の稽古をしているのか」「次に何を準備すべきか」が見えるようになります。
稽古に参加するときのマナーと準備
稽古の内容と同じくらい大切なのが、稽古場での振る舞いです。基本のマナーを押さえておきましょう。
まず持ち物です。台本、筆記用具、動きやすい服装と上履きは必須。台本には演出の指示をすぐ書き込めるよう、付箋やシャープペンシルがあると便利です。飲み物も忘れずに。
時間は「開始時刻=稽古が始まる時刻」です。着替えやストレッチを済ませて開始時刻を迎えられるよう、15〜30分前には到着しておくのが舞台の常識です。また、自分の出番がない場面の稽古も、可能な限り見学しましょう。作品全体の理解が深まるだけでなく、演出家が何を求めているかを学ぶ最高の教材になります。
よくある質問
Q. 稽古についていけるか不安です
初参加なら誰でも不安です。大切なのは、わからないことを放置しないこと。稽古用語や段取りで不明な点があれば、休憩時間に先輩や演出部に確認しましょう。「初めてなので教えてください」と言える素直さは、現場で確実に好かれます。
Q. 稽古の頻度はどれくらいですか?
団体によって大きく異なります。小劇場なら週2〜4回×1〜2か月、社会人劇団なら週1回×数か月というペースもあります。商業演劇では連日長時間の集中稽古が一般的です。応募前に稽古スケジュールを確認し、自分の生活と両立できるかを見極めましょう。
Q. 自主稽古では何をすればいいですか?
セリフを覚えるのは大前提として、おすすめは「相手のセリフを覚える」ことです。自分のセリフだけ覚えていると、きっかけ待ちの芝居になりがちです。場面全体の流れが頭に入っていると、稽古場での吸収力がまるで違ってきます。
これは私自身の話ですが、稽古場で今もいちばん心に残っているダメ出しがあります。「自分のセリフだけ覚えるな」——自分のセリフを完璧に覚えたつもりで稽古に臨んだ私に飛んできた言葉です。自分の番だけを待っている芝居は、相手の言葉を聞いていない。場面全体が頭に入って初めて、セリフのやり取りが「会話」として動き出すのだと、このとき教わりました。以来、台本を覚えるときは相手のセリフごと覚えるのが私の習慣になっています。
稽古を成長の場に変える3つの習慣
①稽古ノートをつける——演出から受けた指示、気づいたこと、明日試したいことをその日のうちにメモする。振り返りの質が成長速度を決めます。
②ダメ出しは「宿題」として持ち帰る——その場で凹むのではなく、どう直すかを考えて次の稽古で答えを出す。この繰り返しが信頼を生みます。
③他人へのダメ出しも自分事として聞く——共演者への指摘には、作品全体へのヒントが詰まっています。稽古場の全情報を自分の栄養にしましょう。
稽古は本番のための準備であると同時に、俳優がいちばん成長する時間そのものです。一回一回の稽古を大切に積み重ねてください。
これから稽古に参加する機会を探す方は、「声優・舞台俳優のオーディション情報まとめ」もご覧ください。また、稽古場での人間関係に不安がある方には「舞台俳優のコミュニケーション能力の育て方」が参考になるはずです。稽古場という特別な場所で過ごすあなたの時間が、実り多いものになりますように。
稽古と本番の関係を誤解しないために
初心者が陥りがちな誤解に、「稽古は本番の劣化版」というものがあります。つまり、本番でうまくやるために稽古では手を抜いてなぞるだけ、という姿勢です。これは逆効果です。
身体は正直で、稽古でやったことしか本番では出ません。稽古で毎回全力の芝居をしている人は、本番でも安定して力を出せます。稽古で流している人は、本番の緊張の中で普段以上のものが出ることはまずありません。「稽古は嘘をつかない」——これは多くの演出家が口を揃えて言うことです。
もちろん、声や身体を痛めないためのセーブが必要な場面もあります。大事なのは、セーブする箇所を自分で選んで意図的にやること。全力と省エネを意識的に使い分けられるのも、プロフェッショナルな稽古の技術のひとつです。
稽古場は、失敗していい唯一の場所です。本番では許されない挑戦も、稽古なら何度でも試せます。「うまくやる場所」ではなく「試す場所」だと捉え直すと、稽古が何倍も面白くなり、あなたの芝居の幅も広がっていきます。恐れずに、たくさん失敗してください。その全部が本番の説得力に変わります。
初めての稽古場に向かう日は、誰でも緊張するものです。でも大丈夫。この記事で流れとマナーを予習したあなたは、もう準備ができています。あとは楽しむだけです。良い稽古を!


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