
「ゲームの声優に憧れるけど、アニメの収録と何が違うの……?」
アニメを入り口に声優を目指した人ほど、ゲームの収録現場は想像しにくいものです。
映像を見ながら口を合わせる場面が少なく、台本も驚くほどシンプル。求められるスキルの方向性が、じつはかなり違います。
この記事では、ゲーム収録の特徴をアニメとの違いから整理し、現場で役立つスキルと、体を守る習慣までまとめました。
ゲーム声優の仕事とは?アニメとの立ち位置の違い
ゲームの声優は、キャラクターのセリフを収録してゲームに実装される音声をつくる仕事です。
主人公や仲間のセリフはもちろん、戦闘中の掛け声、ダメージを受けた時の声、街の住人の一言まで、収録するのは膨大な量になります。
アニメは「決まった映像に声を合わせる」仕事ですが、ゲームは「プレイヤーの操作しだいで再生される声」を用意する仕事。
同じ声優でも、頭の使い方がまるで違うのです。
なお、声優の仕事全体の広がりについては、声優の仕事7種類|アニメ以外の活躍の場まとめで整理しています。ゲームがどんな位置づけか気になる方は、先に読んでおくと全体像がつかめます。
アニメとの違い① 映像がないことが多い
ゲーム声優のスキルについて専門学校の講師が語ったインタビュー(ゲームビズ掲載)でも、ゲームの収録は映像がない場合が多く、演技のヒントが限られると指摘されていました。
アニメなら口の動きや表情、動きのタイミングが画面に出ています。ゲームではそれがない、あるいは仮のものだけという現場があります。
だから「頭の中に映像を描く力」が問われます。
ト書きの一行から、キャラが走っているのか、崖から落ちているのか、泣きながら笑っているのかを想像して、声だけで成立させる。
ゲームの収録に参加した声優のインタビュー(Game*Spark掲載)では、映像から表情を推測して演じていたところ、音響監督から「見えていないならもっとやっていい」という趣旨の気づきをもらい、リアクションを大きくしたという話もありました。
映像があっても、遠慮せず振り切る勇気が必要になる場面がある、ということです。
アニメとの違い② 台本が「ト書きだけの紙1枚」のことがある
同じインタビューでは、ゲームの台本が1枚の紙にト書き程度の最小限の情報しかないケースがあると紹介されていました。
アニメの台本のように、前後の流れや相手のセリフがぎっしり書いてあるとは限りません。
たとえば「(戦闘中)敵に斬られる」「(喜び)アイテムを入手した」といった一行に対して、その場でいくつか演じ分けることになります。
物語の全体像を知らされないまま、キャラの感情の温度だけを推測して声にする場面もあるわけです。
そこで役立つのが、事前に「このキャラは何者か」を自分で言葉にしておく習慣です。
資料が少ないなら、少ない材料から人物像を決めて持っていく。これは舞台の役作りにも通じる作業で、舞台で台本の行間を埋める習慣がある人は、声の仕事でもその強みを活かせます。
アニメとの違い③ ダメージボイスなど「行動を声にする」演技が多い
ゲームならではの仕事が、行動そのものを音声にする演技です。
走る、跳ぶ、剣を振る、ダメージを受ける、倒れる。こうした動作に合わせた声を、セリフの合間に大量に収録します。
前述のインタビューでは、「小ダメージ」だけでも3種類以上の演技パターンを持っておく必要があると語られていました。
プレイヤーは同じ場面を何十回も繰り返すので、同じ声ばかりだと飽きてしまいます。だからバリエーションが必要になるのです。
ここで大事なのは、雑に叫ぶのではなく、キャラクターの性格を保ったまま出し分けること。
気の強いキャラと臆病なキャラでは、同じ「痛い」でも音の出し方が変わります。
ただし、叫びや荒い息づかいは喉に負担がかかります。
実際、海外ではゲーム分野の声の仕事で、声帯へのストレスが多いことを調べた調査(ACTRA Toronto)が報告されています。ゲーム収録は、演技力と同じくらい「喉の管理力」も問われる現場だと考えてよいでしょう。
喉を守る具体的な習慣は、声優の喉のケア習慣5選|収録前の飲み物・NG食品・体調管理を現場目線で解説で詳しく書いています。
アニメとの違い④ ディレクションが変わりやすく、即応力が求められる
インタビューでは、現場でのディレクションが頻繁に変わりやすく、意図をくみ取って柔軟に対応する力が重要だと語られていました。
ディレクターの指示が「もう少し柔らかく」「もっと強く」のように感覚的なことも多く、それを声の高さ・速さ・息の量に翻訳する作業が続きます。
Game*Spark掲載のインタビューにも、声質が柔らかい声優さんが、キャラの冷たさを出すために「もっと厳しく」と調整を受けたという話がありました。
自分の得意な出し方に固執せず、指示を受けて即座に変えられるかどうかが評価につながります。
洋画の吹き替えなど、他の収録現場でも「合わせる」力が問われます。アニメとの差を比べたい方は、声優の洋画吹き替え現場|アニメ収録との4つの違いとリップシンク術もあわせてどうぞ。
ゲーム収録とアニメの違い、4つのまとめ
- 映像
アニメは映像に合わせる。ゲームは映像がないか仮のことが多く、想像力で補う。 - 台本
アニメは流れのある台本。ゲームはト書き中心で情報が少ないこともある。 - 演技の中身
アニメはセリフ中心。ゲームはダメージや掛け声など、行動を声にする演技が多い。 - ディレクション
ゲームは指示が変わりやすく、瞬時の対応力が必要。
ゲーム収録に必要なスキルと、今日からできる練習
ここまでの違いを踏まえると、必要なスキルは大きく3つに整理できます。
「想像力」「バリエーションの引き出し」「柔軟な対応力」です。
今日からできること
- ト書き一行から演技を3通りつくる
「敵に斬られる」など短い一行を用意し、性格の違う3人のキャラで演じ分けてみてください。録音して聞き比べると、引き出しの少なさに気づけます。 - 同じ「痛い」「やった」を5パターン録る
大きさ、高さ、息の量を変えて出し分ける練習です。ダメージボイスの基礎トレーニングになります。 - 指示を聞いて即変える練習をする
「もっと柔らかく」「今度は悔しさを混ぜて」と自分に指示を出し、10秒以内に演技を変えます。友人に指示役をお願いできるとさらに効果的です。 - マイクとの距離感を体に入れる
叫ぶ演技ではマイクとの距離や角度が命です。声優のマイクワーク完全ガイド|距離30cm・角度・移動の5つのコツを読みながら試してみてください。 - 収録後の喉を休ませる時間を決める
叫ぶ練習をした日は、水分をとって声を使わない時間をつくります。無理を続けないことが長く続けるコツです。
声を使う練習を独学だけで続けるのが不安な方は、比較記事の声優向けボイトレスクール比較|Voice Camp・ナユタス・シアーの選び方も参考になります。
収録当日に慌てないための準備
ゲームの現場は、指示が変わる前提で動きます。だからこそ、自分でコントロールできる部分を事前に固めておくと安心です。
①キャラクター像を自分の言葉でメモする
資料が少ない時ほど、年齢・口ぐせ・怒った時の話し方などを、自分で仮決めして持っていきます。指示が出た時に「ここを変えればいい」と判断しやすくなります。
②声を出す順番を決めておく
いきなり叫ぶのは危険です。小さな声、通常の声、大きな声の順に温めてからブースに入る流れを、自分のルーティンにしておきましょう。
③水分と休憩のタイミングを確保する
叫ぶセリフが続く日は、休憩を挟みながら進めてもらえるよう、無理をしないことも大切です。声を壊すと、次の仕事に響きます。
収録当日の流れそのものは、声優の収録当日5つの流れ|起床・香盤表・リハ・本番までのリアルな1日にまとめています。ゲームでも基本の動きは共通しています。
現場で評価されやすいのは、「うまい人」より「変化にすぐ応えてくれる人」だと言われます。
指示を受けた時に、いったん受け止めてから声に反映する。この素直さは、才能ではなく習慣で身につきます。収録が終わったら、どんな指示が出たかをメモして、次の練習に活かしてみてください。
ゲームの仕事はどうやって取る?現場に近づく入り口
ゲームの配役は、事務所が複数の若手の中から振り分けて出演者を決めるケースが多いと、先ほどのインタビューでも触れられていました。
つまり、事務所に所属して現場の声がかかる状態をつくることが、最初の入り口になります。
そのためにできる準備は、地道ですが3つあります。
まず、ボイスサンプルに「ゲームらしい演技」を入れること。ダメージボイスや掛け声、短いセリフの演じ分けを入れておくと、ゲーム収録への適性が伝わります。
次に、オーディションに向けた録音環境を整えること。最近は自宅での収録データの提出を求められる場面も増えています。
最後に、現場でのマナーと対応力を磨くこと。ディレクションに素直に応えられる人は、次も呼ばれやすいと感じます。
ボイスサンプルの作り方は、声優ボイスサンプルの作り方|宅録マイク予算別3タイプの費用相場を解説で解説しています。
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まとめ
ゲーム声優の収録現場は、アニメと比べて「映像がない」「台本が少ない」「行動を声にする」「指示が変わりやすい」という4つの違いがあります。
その分、想像力とバリエーション、そして柔軟な対応力が武器になります。
演技の引き出しは、日々の小さな練習でしか増えません。
まずはト書き一行から3通りの演技をつくるところから、始めてみてください。
あなたの挑戦を、心から応援しています。


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