声優のアフレコ台本の書き込み術|セリフ・ブレス・間の記号など5つの下準備

声優への道
声優のアフレコ台本の書き込み術|セリフ・ブレス・間の記号など5つの下準備

「台本をもらったけど、どこに何を書き込めばいいのか分からない……」

声優を目指して養成所やワークショップに通い始めると、最初にぶつかるのがこの壁です。
舞台の台本なら書き込みの経験がある人も多いのですが、アフレコ台本は勝手が少し違います。

画面を見ながら、決まった尺の中でセリフを入れる。
しかも本番は一発勝負に近く、台本を丁寧に眺めている余裕はほとんどありません。

この記事では、アフレコ台本に書き込みをする目的と、収録前にやっておきたい5つの下準備を整理します。
記号の付け方は人によって違うので、あくまで「自分用の型を作るための材料」として読んでください。


アフレコ台本に書き込みをする本当の理由

書き込みの目的は、きれいな台本を作ることではありません。
本番中に迷わないための「道しるべ」を残すことです。

収録現場では、ディレクターの指示がその場で飛んできます。
「ここはもう少し抑えて」「語尾を落として」と言われた瞬間に、メモを取りながら次のセリフに備えなければなりません。
頭の中だけで全部覚えようとすると、必ずどこかで抜け落ちます。

稽古場でダメ出しを書き留めても、書いたはずのメモを後から読めなくて困る、というのはよくある悩みです。
急いで書いた字は、本番の緊張の中では本当に読めません。だからこそ、事前に決めた記号で短く書くことが大事になります。

収録当日の流れについては、声優の収録当日5つの流れ|起床・香盤表・リハ・本番までのリアルな現場で詳しく書いています。あわせて読むと、書き込みをどの場面で使うのかがイメージしやすくなります。


収録前にやっておきたい5つの下準備

①セリフの「切れ目」と「息継ぎ」に印をつける

最初にやるのは、声に出して読みながらブレス(息継ぎ)の位置を決めることです。
斜線「/」で切れ目、「V」などの記号でブレスを入れる、と自分の中でルールを固定します。

長いセリフほど、読んでいる途中で息が足りなくなります。
どこで吸うかを決めておけば、焦っても息切れせず、意味の切れ目で自然に息が入ります。

②強調する言葉に下線を引く

1つのセリフの中で、一番伝えたい言葉を決めます。
全部を強く読むと、結局どれも立ちません。強調は1セリフに1か所、多くても2か所が目安です。

強調の置き方でセリフの意味は変わります。
「私は、あなたが好きです」と「私は、あなたが好きです」では、聞こえ方がまったく違いますよね。
下線や波線など、自分が見て一瞬で分かる印を選んでください。

③「間」と「尺」を書き込む

アフレコは画面の動きに合わせて声を入れる仕事です。
口の動きが止まる位置、相手のセリフが重なる位置などを、台本の余白にメモしておきます。

間を取る場所には「・・」や「↑」など、見て分かる印を。
画面を見ながら視線を台本に落とす時間は短いので、文字ではなく記号で書くのがコツです。


④感情の流れを矢印や一言メモで残す

セリフ単体ではなく、前後のつながりで感情の山と谷を見ます。
「↗」で上がっていく、「↘」で沈んでいく、というように矢印で流れを書くだけでも、読み方が整理されます。

もう一つ、一言メモも効きます。
「本当は泣きそう」「強がり」「照れ隠し」など、役の本音を3〜5文字で書いておくのです。
本番で気持ちが迷子になった時、この一言が戻る場所になってくれます。

セリフの感情を作る考え方は舞台と共通する部分も多く、舞台俳優の本読み・顔合わせ入門|台本の書き込み方と好印象を残す5つのコツも参考になります。

⑤筆記具と書き方のルールを決めておく

意外と見落とされるのが、何で書くかです。
現場ではディレクターの指示で、セリフの言い回しが直前に変わることがあります。
その時に消せない筆記具だと、台本が真っ黒になって読めなくなってしまいます。

おすすめは、基本は消せる鉛筆かシャープペン、重要な指示だけ色ペンという使い分けです。
色は増やしすぎないこと。3色までに絞ると、見た瞬間に意味が分かります。

  • 黒・鉛筆
    ブレスや切れ目など、変わりやすい情報
  • 赤
    ディレクターから出た修正指示
  • 青
    感情や役の本音など、自分用のメモ

色の役割は人それぞれです。大切なのは、毎回同じルールで書くこと。
ルールが固まると、書き込みの時間も短くなります。


やりがちな失敗と対処法

書き込みを始めたばかりの頃は、どうしてもやりすぎてしまいます。
よくある失敗を3つ挙げます。

  • 書き込みすぎて本文が読めない
    余白に書き、本文の上には重ねないのが基本です。
  • 記号が毎回変わる
    作品ごとに記号が変わると混乱します。自分の型を1つ決めて使い回しましょう。
  • 書き込みに頼りすぎて、画面を見ていない
    台本は補助です。最後は画面と相手の声に集中します。

作品ジャンルで変わる書き込みの重点

同じ「アフレコ」でも、作品のジャンルによって、書き込みで重視するポイントは変わってきます。
ここでは、一般的に言われている傾向を整理します(現場や作品によって異なるため、目安として読んでください)。

ジャンルが変わっても、共通する土台は「ブレス・強調・間」の3つです。
まずはこの3つを自分の型にしておけば、どの現場でも応用が利きます。


書き込みの型を育てるコツ

型は一度作って終わりではありません。
収録やレッスンのたびに「この記号は使わなかった」「この印が足りなかった」と振り返り、少しずつ調整していくものです。

おすすめは、終わった後に台本を見返す習慣です。
書き込みのうち、本番で実際に役立ったものはどれか。邪魔だったものはどれか。
その答え合わせを繰り返すと、無駄な記号が削られていきます。

また、先輩や同期の台本を見せてもらえる機会があれば、遠慮せずに見せてもらいましょう。
人によって記号の使い方がまったく違うことに驚くはずです。
他人の型を真似してみて、合わなければ戻す。その試行錯誤そのものが、自分らしい準備の形をつくります。

もう一つ大切なのは、書き込む量を減らす勇気です。
慣れてくると、本当に必要な印は驚くほど少なくなります。
経験を積むほど、台本は「きれいに」なっていく。これは多くの現場で聞く話でもあります。


「書き込みの落とし穴」

舞台の稽古場でもよくあることですが、台本を真っ黒にするほど準備した日に限って、本番で台本の字を追ってしまい、相手の声を聞き逃すことがあります。
準備した安心感が、かえって目線を台本に縛りつけてしまうのです。

書き込みは「覚えるため」ではなく「忘れても戻れるため」の道具。
そう割り切ると、書く量も自然と絞れます。
声優の現場でも同じで、台本を見る回数は少ないほど、画面と相手役に集中できます。

ブレスや発声そのものに不安がある場合は、書き込み以前に基礎を固めるのが近道です。
スクールの選び方に迷う方は、声優向けボイトレスクール比較|Voice Camp・ナユタス・シアーミュージックの違いもあわせて見てください。


今日からできること

  1. 手元の台本(なければ短い原稿)に1ページだけ書き込む
    ブレスと強調だけで構いません。まずは2種類の記号から始めましょう。
  2. 自分用の記号表を1枚作る
    斜線はこの意味、下線はこの意味、と書き出して台本の最初のページに貼っておきます。
  3. 声に出して読み、録音して聞き返す
    書き込みどおりに読めているか、自分の耳で確かめます。ずれが見つかれば記号を直しましょう。
  4. 書き込みを見ずに1回読んでみる
    台本に頼りすぎていないかの確認になります。

よくある疑問

台本はデータで受け取る場合、どう書き込む?

PDFなどで台本を受け取る場合は、印刷して紙に書き込むのが基本になると考えられます。
タブレットに直接書き込む方法もありますが、現場の持ち込みルールや、ページをめくる音が収録に入らないかなど、確認すべき点があります。事前に現場へ確認しておくと安心です。

記号は統一したほうがいい?

業界共通の決まりがあるわけではなく、人それぞれの型で問題ありません。
ただし、自分の中では必ず統一してください。記号の意味を忘れると、せっかくの書き込みが読めなくなります。

書き込みの時間が足りない時はどうする?

台本が直前に届くこともあります。
その場合は、全部を書き込もうとせず、ブレスと強調の2つだけに絞りましょう。
優先順位を決めておくと、短い時間でも最低限の準備ができます。


練習として何を読めばいい?

手元に収録用の台本がない時は、短い小説の会話文や、好きな作品のセリフを書き起こしたものを使います。
大切なのは作品選びではなく、「同じ原稿に何度も書き込んで読み直す」ことです。
最初の書き込みと、3回目の書き込みを比べると、自分がどこで迷っていたかがはっきり見えてきます。
この比較こそが、台本の読み方を深める一番手軽な練習になります。


まとめ|書き込みは「迷わないための道しるべ」

アフレコ台本の書き込みは、見た目を整える作業ではありません。
本番で迷った時に戻れる場所を、事前に作っておくことです。

今回の5つの下準備を、もう一度整理します。

  1. 切れ目とブレスの印で息切れを防ぐ
  2. 強調の下線で伝えたい言葉を絞る
  3. 間と尺のメモで画面に合わせる
  4. 感情の矢印と一言メモで役の流れを保つ
  5. 筆記具とルールを決めて、毎回同じ型で書く

最初から完璧な型は作れません。収録やレッスンを重ねるなかで、自分に合う記号や色が少しずつ見つかっていきます。
書き込みの型は、そのまま声優としての「準備の癖」になります。

あなたの挑戦を、心から応援しています。

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